Nohji's Rock'n Roll Shop


2010.3.8

【My Top 10 Things Of February 2010】

【映画館/オペラ】 METライブビューイング/ビゼー『カルメン』
【映画】 カリフォルニア・トレジャー
【映画】 ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
【iPhoneアプリ】 Top 100s Music Mega Pack (nuTsie)
【テレビ】 アメリカン・アイドル シーズン9
【ライブ】 ブッカーT. @BLUE NOTE TOKYO
【ライブ】 コリン・ブランストーン @Billboard Live
【CD】 ニール・セダカ/The Music of My Life
【五輪】 バンクーバー五輪 開幕式&閉幕式
【You Tube】 The New Jerk Times/YOU'RE SOMEBODY EVEN IF NOBODY LOVES YOU
(順不同)

☆Archive

【My Top 10 Things Of January 2010】

【映画館/オペラ】METライブ・ビューイング/ビゼー『カルメン』@新宿ピカデリー

 どうもオペラはよくわからない。なぜなら、見たことがないから。ナマの舞台を見たら、それはそれで感動するのだと思うのだが。映画館の平面スクリーンで観るには、いろいろと脳内変換とか想像力も必要とされるので、それなりのオペラ脳を持たないド素人には意外とナマより敷居が高いかもしれない。しかも、ライブビューイングは朝10時からの上映。オレにはありえない、家で『暴れん坊将軍』の再放送だって眠くて観ていられない時間だぜ。なので、いいところで眠くなっちゃうの。しかし、何度か観ているうちにだんだん楽しくなってきました。わかったとは言わないが、自分なりにやっぱりオペラすごいなって気持ちになってきた。総合芸術の最高峰レベルとはこういうことかと。特にメトロポリタン・オペラって、ブロードウェイ・ミュージカルと地続きだから理解もしやすいような気がする。ミュージカルの根源にある、ヨーロッパ渡来のハイアートの部分というか。ある種、モダンロックのルーツを辿ってトラッドやゴスペルに行き着くような感覚で。

 中でも2月の『カルメン』は今季METでいちばん人気の新演出で、たいそうエキサイティングで面白かった。舞台を1930年代のスペイン内戦時代に移行して、モダンバレエでセクシャルな暗喩を表現したりとか、何よりカルメンが踊る踊る。歌姫エリーテ・ガランチャさんは、この舞台の直後に体調不良で降板してしまったらしいけど。彼女の情熱的なカルメンと、ドン・ホセの優しい雰囲気のドラマチックなコントラストが「物語」としての魅力も際だたせていた。ビゼーの歌劇はメロドラマ的だったりするので盛り上がる。

 で、カルメンといえば、たまたま同じ時期にイーゴリ・マルケヴィチ指揮のラムルー管弦楽団によるカルメン組曲&アルルの女を聞いて。たまげた。噂には聞いていたけど、マルケヴィチがすごい。はまってしまいました。爆音系というか。ビート出まくり。このカルメン&アルルも、本当に1960年の録音で、しかもフランスのオーケストラなのかと思ってしまうほどアゲアゲのアッパー系(笑)。しかも、アメリカのオーケストラの大音量でダイナミックな感じとも、ちょっと違う。ベネズエラのSBYOの、ラテン的にパンチの効いた激しい感じとも違う。ある意味、パンク系とでも申すのかね。激しくグルーヴィーすぎて、これを聴くと他のビゼーがお上品すぎる気がしてしまうほど。

【映画】カリフォルニア・トレジャー(原題:King Of California ;2007年アメリカ)

 深夜のCSチャンネルぐるぐるしてて、思わぬ掘り出しもの。

 ひとことで言えば、ヘンな映画。でも、いい。

 元ミュージシャンで、精神病院帰りのイカれた父親と、そんなオヤジのせいでしっかり者に育った娘が、ひょんなことから300年前に埋められたスペイン王の財宝を探しに出かけることに。とはいっても、財宝が埋められているのは地元カリフォルニア。しかも、地図によれば、巨大スーパー・コストコの地下なのでした。という、しょぼい『ナショナル・トレジャー』というか、ご近所アドベンチャー。

 で、なんと言っても見逃せないのは、マイケル・ダグラス演じる主人公のキャラ設定。どう見てもブライアンなんだよなー(笑)。しかも、寝室に砂敷き詰めてた頃の。髭ぼーほーで短パンで。で、ときどきちょっとデニスも混じる。かと思えば、逮捕されそうになった婦警さんをしっかり口説き落とすとか…なんか、マイクも入ってる? カリフォルニアのダメオヤジの典型といえば、ブライアン…というかビーチボーイズ総合になってしまうんだろうか。とはいえ、主人公は元ジャズマンという設定ながらも、アホアホなシーンでテルミンが流れていたり。やっぱり、絶対に意識しているんじゃないかなーと身内びいき、いや、逆身内びいき(被害妄想?)で考えてしまう。で、しっかり娘を演じているのが、『レスラー』でミッキー・ロークの娘を演じたエヴァン・レイチェル・ウッドなのですが。これがまた、ほんとに優しくていい子でねぇ(T_T)。父と娘の雰囲気が、ホント、いいんです。なんだか、映画を見ているうちに、この父娘がブライアンとカーニーのような気がしてきてしまった。

 他にも、コストコ従業員で元ヒッピーのダメダメ家族たちが集うパーティ場面でシールズ&クロフツが流れていたり。音楽も、けっこう凝っていてセンスがいい。いちおコメディ映画というジャンルにはなっているのだけれど、ラストに向かうにつれて物語はなんだかちょっと、ハッピーサッドなフシギな感じになってきて。途中までのB級おバカ・アドベンチャーの世界から「マイ・リトル・サンシャイン」路線のインテリ系インディーズ映画によくあるような、ぐっと染みる展開になっていく。で、最後はビリー・ブラッグとウィルコの「California Star」が流れるなんざ、このこのニクいね、あんた。みたいな。偶然の出会いがなければ絶対に見ることがなかった映画だけど、見つけることができてよかったなぁ〜と、キャリフォーニアの夕暮れ空にキラリ☆輝く一番星みたいな素敵な映画でしたよ。CSとかレンタルで見かけたら、ぜひ。

【映画】ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(英題:The Girl With The Dragon Tatto ;2009年 スウェーデン)

 「読んでから観るか、観てから読むか」

 というのは、大ヒット小説の映画化では昔からよく言われることだが。経験上、どっちもありだと思う。まず読んで、原作との違いを映画で確認しながら観るも楽し。映画を観た後で、映像化されなかったディテールを味わいながら読むも楽し。

 だが、「読んでる途中で観る」という選択肢はいかがなものか。

 と、今回つくづく思った。いや、最初は「読んでから観よう」と思っていた。が、なんだかんだ忙しくて、上巻の3分の2くらいまで読んだところで上映が今にも終わる…というのに気づいて。どう考えてもムリ、間に合わない。諦めようかとも思ったけど、やっぱり映画もどーしても観たいから「続きは観てから読む」という人生初の選択肢に挑戦。

 映画はもう、すんごく面白くて。原作は経済からIT、DV問題、財閥家のヒミツ…と現代ミステリのありとあらゆる要素がみっちり詰め込まれているので、映画化は『ダヴィンチ・コード』ばりに筋を追っていくのが精一杯の再現ドラマ風になっているのかなぁ…と思いきや、すごく原作の編集がうまい脚本っつーか。自分が原作を読み終えた段階のところまでしか確認できないけど、物語のダイナミックさを損なうことなく上手にディテールを詰めこんでる感じがした。登場人物のイメージも、よく練られていた。それで、これは原作の残りも読むのが楽しみだな……と映画館を後にしたものの………読んでません。途中まで「観ないで読んでる」モードだったのを、物語がようやく急加速してゆくところで「観てから読む」モードに切り替えるのは難しいわ。それを己の肉体をもって思い知ったわ。

 原作は3部作の『ミレニアム』、映画第2弾も完成しているので日本公開が楽しみ。すでにハリウッドがリメイク権を獲得しているそうだが、これは本国スウェーデン版。原作の登場人物の多さ、しかもスウェーデン語ゆえ企業名や地名、何より人名の男か女かもわからないややこしさは最初戸惑ったけど。映画は主要人物をすっきり絞りこんでいることもあって、わりとわかりやすかった。文字からの想像では補いきれないスウェーデンの文化や土地柄、舞台の背景となった町や人の雰囲気は映画を見て初めてイメージできるようなところもある。だから、先に観ることで原作を読みやすくなるってとこもあるかも。まだ読んでないけど(笑)。ちなみに一緒に観ていた夫は、どんな話かもさっぱりわからないままついてきたんですが、ストーリーもわかりやすいし、やっぱりすごく面白かったと言ってた。あと、余談ですが、日本語字幕の翻訳は元シュガーベイブの寺尾次郎さんだった。確かスウェーデン語の翻訳者のお名前もあったので、もしかしたら映画字幕へのアンカーみたいなお仕事だったのかも(あやふやです)。映画を見ていて字幕に寺尾次郎さんのお名前があると、なんだかちょっとうれしい。

【iPhoneアプリ】Top 100s Music Mega Pack (nuTsie)

 2月半ば、とうとう買ってしまいました。iPhone。Twitterをやっていると、最近ものすごい勢いでiPhone組が増えていて。楽しそうな会話を横目で眺めているうちに、辛抱たまらなくなってしまいました。これまでのブラックベリー+ソフトバンクガラケーから、いよいよスマートホン二刀流でござるよ!

 で、iPhoneといえばアプリ。音楽アプリの面白いのをいろいろ教えてもらって片っ端から入れてみている。自分の好きな音楽をたくさん入れておくのも楽しいけど、iPhoneを使い始めて覚えたのがネットラジオの面白さ。Wi-Fiがないと少し苦しい時もあるけど、けっこう都内だとイケるんじゃないかなー。まだあんまり使ってないのでわかんないけど。

 まず、最初に入れてみた有料アプリ【Top 100s By Year】。これは1948年から2009年までの年間全米チャートBest100を、年ごとに選ぶとランダム再生で100曲フルバージョン聞けるというもの。オールディーズも楽しいけど、知らない曲や思わぬ発見のある最近のベスト100もすごい楽しいし。なんか、これがあったら他に何もいらないじゃーん!くらい盛り上がっていたのですが。その後、もっとすごいヤツ発見。それがこの【Top 100s Music Mega Pack】。なんと、最初に入れた【Top 100s By Year】を含めて全部で30種類もの、様々なジャンルの“Top 100”アプリを収録。60年代から各年代のベスト100もあるし。フォークロックとかサザンロックとかメタルとかサイケデリックロックとかインストとかサントラとかジャンル別の“Greatest 100”もある。そしてギターリフとかギターソロで選んだり、ベースやドラムなど楽器別に選ばれた100曲というのもある。ちなみに今「100 Greatest Rock Debut Singles」というのを選んでみたら、いきなりThe Strawberry Alarm Clockの“Incence and Peppermint”(1967年)が流れてきたよ。ひょえぇぇ〜ヽ( ´ ▽ ` )ノ しびれるよ〜。泣けるよ〜。「すべてのロックファンが知っておくべき500曲」なんていう百科事典みたいなリストもあって、気になっているけどまだ中身を見ておりません。自分が知らない曲があるんじゃないかと不安で不安で(笑)。

■nuTsie's iPhone application support page:
http://www.nutsie.com/iphone

【テレビ】アメリカン・アイドル シーズン9

 いよいよFOX JAPANでも2月6日から始まりました。日本だと数週間遅れなので、これまでも予選が進むにつれてアメリカのニュースサイトとかを極力見ないように……というか、American IdolとかAIとか言う見出しが目に入ったら反射的にパッと閉じるようにしていた。昨年始めたTwitterも、シーズン8が終わるまではアメリカのニュースはフォローしなかった。エンタメ系のみならず、CNNでもAIのニュースが出てしまいますからね。しかし、そんな努力もむなしくベスト8くらいになるとイヤでも目に入ってしまうわけで。ふだんネタバレ問題にはおそろしく無頓着なわたくしも、ほんとにAIにはドキドキハラハラしっぱなしだったのでしたが。今年はもうあきらめた。というわけで、ちょっと先の情報がわかっても気にしないで楽しむことにします。

 審査員が変わったり、いろいろと波乱含みのスタートだったわりには今季も盛り上がってる模様。全米予選が始まってすぐ、“将軍”を名乗るヘンなじっちゃんが登場して自作曲「Pants On The Ground」を披露。腰ばきズボンの若者をディスったごきげんなラップが、すでに全米の社会現象(笑)らしいし。オリンピックでスノボ国母選手の服装が話題になった時、いつこの曲が紹介されるかとワクワク待っていたのだが……されなかった。

 3月に入り、これを書いている時点ではいよいよハリウッド予選が始まったところ。ここのところ男子が優勢が続いていて、しかもドートリー以降は今ひとつ爆発級のスターは育っていないということもあって、今季はなんとなく女子が活躍するシーズンになりそうだなという予感がするんですけど。実際、予選では、テイラー・スウィフトとかケリー・クラークソンっぽい雰囲気でけっこううまくていいなぁって思う女の子が多かったし。なんだかんだ、やっぱり今年も毎週楽しみだなぁ。

【ライブ】ブッカーT.
・2月10日@BLUE NOTE TOKYO

 ニール・ヤング、DRIVE-BY TRUCKERSを迎えて作ったアルバム『ポテト・ホール』が今年の第52回グラミー賞で最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞したばかりという最高のタイミングでの来日。バックはまさかDRIVE-BY TRUCKERS……なんて期待したものの、そんなわけもなく、MG’Sでもなく、全米ツアーのメンバーと共に元気ハツラツやって来てくれました。バンドがちょっと若いというか(実年齢はそうでもないのですがw)、最初はややソツなさすぎるかな?という感じがあったのだが。そのぶん、ブッカー父さんのカッコよさがよけいに際だったということもあって結果オーライで最高のライブ。ブッカー父さん側の席だったので、ステージに向かう時もすぐ前を通っていったし、オルガンもよく見えた! ステージにあがるとまず、お帽子(いかにもシャッポ、という感じの)を脱いでゆっくりとオルガンの上に置く。そしてステージを降りる時にはまたお帽子をきちっとかぶる。その所作がなんともカッコよくてしびれた。ステージでかぶらないなら、最初から脱いで出てくればいいじゃん…みたいなことを思う限りは、ソウルはわからんのだね。たぶん。いや、ソウルに限らずいろんなことがわからんのだろう。

 『ポテト・ホール』は、オレ的にはここ10年くらいで最強のクルマ仕様ホッドロッド・インスト・アルバムだと思っていて。当然、だからこそDRIVE-BY TRUCKERSという南部のトラック野郎軍団みたいな(←まぁ、実際トラック野郎じゃないし。名前だけだけど)バンドをバックに従えて、さらにはゲストというより全曲フツウにギタリストのメンバーみたいにニール・ヤング兄さんまで参加。兄さんにしても、「今、オレの自慢のクルマに積むのに最高のインスト・アルバムが欲しい」という想定のもと、ああいうクルマにバッチシのビリビリバリバリゴキゴキ・ギターをかき鳴らしていたに違いねぇ!というのがわたくしの推論なのですが……。そういえば『ポテト・ホール』の曲は、数曲だったな。なんと、今回のブッカー父さん、途中からギター弾いて歌ってたよ。それも、けっこうな曲数を。いやー、その予想Guyぶりにまたシビれました。

 いくらグラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を獲りたてホヤホヤだからといって「インストやれ」とか、ブッカー父さんだから「オルガン弾け」とか、そんなこと言ってるうちはやっぱり何もわかってないんだよ。

【ライブ】コリン・ブランストーン
・2月24日 @Billboard Live TOKYO

 ベテラン歌手に対して求める魅力って、主にふたつあって。ひとつは「年齢と共に枯れてゆく渋さ」、もうひとつは「変わらない」ことではないかと思う。コリン・ブランストーンは、どっちでもない。どっちもある、ともいえるが。基本的には、どっちでもない魅力ってことだろうな。実際「ああ、やっぱりけっこう歳なんだなぁ」と思わせるような部分もあるのだけど、そうして油断しているとフッと「わっ!コリン・ブランストーンだ!」としか言いようのない、輝ける美声が炸裂する瞬間が来る。

 ちなみに私が見たのは2回ステージの1回めで、わりとステージ終盤に行くに従ってどんどん、どんどん声が出てきて調子が出てきた感じで。これは時差ぼけもあるのかな、きっと次のステージは最初からバリバリなんだろうな羨ましい…と思っていたら、2回目も終盤でものごっつ調子が出てきたそうだ(笑)。そういうところも、なんか、いい。歌い終わった後に曲の説明を始めて、バンドの人に「それ、もうやったから」って言われるところもあって…ひょっとして、けっこうおおらか天然系? いかにもイギリスっぽいファファファ〜っていう英語でゆっくり話してくれるのは、ロンドンに行った時のことが思い出されて懐かしかった。

 曲はもちろん『One Year』中心だけど、いろんな人とやった曲やカバーもあって盛りだくさんな感じだった。ゾンビーズの曲はあんまりやらないよ、ともともと宣言していたけど。それでも2曲やってくれたら大満足。

【CD】ニール・セダカ/The Music of My Life

 手練れの美学。

 こういうアルバムのことをいうのだろう。

 ベテランの醍醐味とは、ムダのない動き。起居動作のすべてがさりげなく、見とれるほどの美しさをもって、息をするようなリズムで音楽が作られていくこと。

 ふわっと軽快な、ダンサブルな序盤のラブリーさ。そして中盤の、ドゥーワップあたりからじわじわと見えてくる漢・セダカの豪腕本気汁。やっぱりものすごい。素晴らしい。しかし何故か全編、「なんてことない」と思わせる身軽さがある。ここが、とにかく色っぽいのである。これが歴史の育んだ匂い、なのだな。若い頃に何枚かの名盤を作った後は余生だ、という意識からは決して生まれない音楽がここにある。とっておきグルメみたいな歴史的名盤の“重さ”に対して、このアルバムには、日々のおいしいごはんが続いてゆくことで日常になる…という贅沢な“軽さ”がある。

 ↑以上。このアルバムを最初に聴きながら書いた、わたくしの覚書メモである。いったい何を言いたいのかよくわからない。というか、自分ではなんとなくわかるんだけど。

 このアルバムに寄せられたセダカねえさん自身によるライナーには、曲作りに対する自らの思いがていねいに綴られている。必読。57年間ソングライティングを続けてきた今なお、彼は新しい曲を書き続けている。アーティストとしてたくさんの変化、痛み、癒しといった経験をして、それを乗り越え、ピアノと譜面の上に解放していく作業を、彼は「emotional writing」と呼んでいる。最後に彼は、人生を通して聴いてきたあらゆる音楽にインスパイアされたことをとてもラッキーだと思い、自分を感動させてくれたすべての人たちにこのアルバムを捧げると締めくくっている。それは家族や友人だけでなく、すべてのリスナーも含まれているのだろうと想像する。

【五輪】バンクーバー五輪 開会式&閉会式

 なんだかんだで、結局バンクーバー五輪はがっつり見ちゃいました。が、ここでは想像以上に音楽イベント色の濃かった開会式&閉幕式について。開幕前から、どんなミュージシャンが出てくるのかなぁといろいろ予想して楽しみにしていて。やっぱニール・ヤングにいさんは出てくるのだろうかとか、ブライアン・アダムス出るかなぁとか、ザ・バンドの再結成があったらスゴいなとか、DEVOもいきなり開会式に出てきたりして…とか。ただ、たぶん最終的にはマイケル・ブーブレとセリーヌ・ディオンとデヴィッド・フォスターが大トリを飾って…みたいなことだろうなと思っていた。まぁ、「その国のいちばんスゴい人たちが出る」というのは当然のことで。ただ、フツウのロック好きである我々と、お国のエライさんの感覚では、その「スゴい」の基準はちょっと違ったりするわけで。それだけに、まぁ、どのあたりのミュージシャンがどんな風に起用されるかというのは、ふだんの音楽イベントとは違う意味での面白さがあるわけだ。

 で、今回のバンクーバー五輪。私が記憶している限り、アメリカ開催の時も含めて今まで見た開会式の中でいちばん面白かった。音楽的な意味で。どうしても音楽に関してはアメリカを中心に物事を考えてしまうわたしとしては、ニール・ヤングもザ・バンドも「外側からアメリカを見てきた人たち」、すなわち俯瞰でアメリカを眺める立場からのアメリカン・ロック…という風にとらえてしまうのだけれど。アメリカに対して、よくも悪くもサブカルチャー的なスタンスでいるカナダならではの面白さを改めて知った。こんなにアメリカに近くて、アメリカ的な文化を背負いながらも全然違う。似て非なる面白さ。根本的に、エンターテインメントに対する感覚が違うのだろう。「これぞアメリカ!」みたいなデフォルトの縛りがないぶん、クリエイティヴィティに自由と身軽さがあるのか。

 いろいろ、いろいろ、たくさんの人たちが出てきていろいろ面白かったのだけれど。とりあえず、象徴的な2人について。いうまでもなく、k.d.ラングとニール・ヤングである。どこかでk.d.ラングが出てくることは想像がついても、開会式のもっとも重要な場面で彼女が登場して「ハレルヤ」を歌うことを誰が予想していただろう。レナード・コーエンではなく、k.d.ラング。カナダ、サイコーにいかしてるなぁ。と思った。いわば、トリノではパパロッティが「誰も寝てはならぬ」を歌った位置で、k.d.が「ハレルヤ」を歌う。ジャンルとか、世界的な知名度とか、そういうモノサシでは想像のつかないこと。でも、音楽という世界のなかでは「なるほど!」とヒザを打つ納得のキャスティングだ。セリーヌが歌っても、それはそれでよかったと思うけど。こういう“面白さ”はなかったよね。そして、閉会式のニール・ヤング。帽子かぶって、いつものボロいギターとハモニカで、広大なオリンピック会場にたったひとりで登場。巨大な氷柱を模した聖火台をバックに「Long may you run」を歌った。いつもと変わらぬ感じで。いや、ちょっとは違う。少しキレイな服だったし、モミアゲ整ってたし、歌もふだんより丁寧で優しかったかもしれないけど(笑)。それでも、オリンピックという全地球規模イベントの閉会式という大舞台で見るニール・ヤングは、わたしたちのよく知っているニール・ヤングそのまんま。その自然体っぷりのカッコよさ、魂が震える思いだった。ひとりの音楽ファンとして、ニルヤン兄さんをとても誇らしく感じた。もちろん、k.d.ラングにも同じことを感じたし。

 ニール・ヤングが歌い終わった後、聖火を消すセレモニー(←なんていうの?)。何よりたまげたのは、この場面だった。バンクーバー五輪の象徴、そびえたつ聖火台が役目を終えて沈んでいく儀式で流れていたのはオーケストラによる「Long may you run」。最近の若い人は、何かっつーとアンセム、アンセムって使うでしょ。ちょっといい曲だな、と思ったくらいでボクたち世代のアンセムとか。でも、ホントのアンセムってこーゆーことじゃないのか。もう、アンセムの上に調子こいてナショナルつけちゃってもいいかな、オリンピックだし…くらいの。て、よくわからないけど。ま、とにかく「Long may you run」で幕を閉じるオリンピックを体験できるなんて、長生きはしてみるもんだ。

【You Tube】The New Jerk Times/YOU'RE SOMEBODY EVEN IF NOBODY LOVES YOU

 最近のブルックリンの音楽シーンは面白いけど、古いもの好きの自分にはそれほど縁のある人たちは少ないのかなぁ…と思っていた。たとえばドラムスとかも嫌いじゃないけど、NMEが言うほど胸ときめかせて夢中になれないし。今さら、情報を追いかける気力もないし…と、わりと消極的だったんですが。去年のダイアン・バーチとか、先月ここで紹介したCare Bears On Fireとか、どうにも見逃せない音楽も少なくはないわけで。しかも、最近ひと目ぼれして買ったペンダントがブルックリンのアーティストのハンドメイドだったり。なんか、ブルックリン、縁があるかも。と今さらながら思い始めた今日この頃。

 すると、ここでもTwitter大活躍。

 じっくり探検しないまでも、気になる情報サイトをフォローしておけば、面白そうな最新情報だけちょこちょこっと教えてもらえる。で、今年のバレンタイン・デーに出会ったのが、The New Jerk Timesの“デビュー・ビデオ”だという「YOU'RE SOMEBODY EVEN IF NOBODY LOVES YOU」。なんというか、フィーバー系ジャズソングっていうか(笑)。でも、ボビー・ダーリン好きにはたまらないものがありますし。インディーズならではの手作りゴージャス感、そのわりにけっこうなブレーンの数々が背後にいそうな雰囲気…は、まぁ、フリッパーズギター初期の匂いにも近いものがないともいえない。ボーカルのMichael LevitonはもともとSSWとしてソロ活動をしていた人だが、この曲からゲストというかメンバーになったみたい。これから毎月、新作が出る予定らしいので期待。The New Jerk Timesのオフィシャルサイトは、いかにもブルックリンっぽいセンスで、音楽以外にもお気に入りのアートワークや面白ネタが日々投下されている。

■The New Jerk Timesさんのチャンネル on You Tube
http://www.youtube.com/user/TheNewJerkTimes



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